世の中には様々な投資手法が存在し、投資を行うにしてもどのような投資を行えばよいのかということは一見難しい問題に思えます。
しかし実はその判断基準は簡単で、期待収益率を計算すればよいのです。その投資において期待されるリターンを計算することにより数字で論理的に判断できるようになるのです。
期待収益率を使うことによりどの株式を買えばよいか・売ればよいかが分かるようになり、「なんとなく」の投資から抜け出すことができるでしょう。
判断基準はシンプルで、期待収益率が高いものに投資すればよいのです。絶対的に100%正しい投資基準であるとは流石に言えませんが、明確な判断基準の一つとなることでしょう。
期待収益率とは
期待収益率とは特定の資産を運用した場合において、将来獲得することのできる平均的な投資収益率(リターン)のことです。
将来のことなので完全に正しい予測することは不可能ではありますが、十分な数の統計がとれており、個々の事象が起こる確率が分かっている場合は計算することができます。
ここでは株式投資における年率換算の期待収益率の計算方法を紹介します。
①EPSとROAを9年分用意する
①EPSを9年分用意する
適正PERを計算するにはその企業の財務データが必要になります。財務からその企業の利益成長率を計算し、その結果期待される株価を計算するからです。
今回利用する計算方法では9年分のEPSが必要になります。
②適正PERを計算する
年度 | EPS |
2012 | 16.16 |
2013 | 18.79 |
2014 | 20.57 |
2015 | 22.84 |
2016 | 27.85 |
2017 | 18 |
2018 | 43.7 |
2019 | 49.16 |
2020 | 58.61 |
EPSをならす
EPSのでこぼこをなくす作業です。
特別利益(損失)やその他の理由での異常値は、その特別利益(損失)が無かったら計上されるだろう数値に置き換えます。
EPS | ならし後EPS | |
2012 | 16.16 | 16.16 |
2013 | 18.79 | 18.79 |
2014 | 20.57 | 20.57 |
2015 | 22.84 | 22.84 |
2016 | 27.85 | 27.85 |
2017 | 18 | 35 |
2018 | 43.7 | 43.77 |
2019 | 49.16 | 49.16 |
2020 | 58.61 | 58.61 |
各年度のEPS成長率を計算し、 EPS成長率平均を算出する
計算した各年度のEPSを前年のEPSで割り、各年度のEPS成長率を計算します。
各年度のEPS成長率が計算できたらその平均値を算出します。
ならし後EPS | EPS成長率 |
16.16 | |
18.79 | 16.3% |
20.57 | 9.5% |
22.84 | 11% |
27.85 | 21.9% |
35 | 25.7% |
43.77 | 24.9% |
49.16 | 12.5% |
58.61 | 19.2% |
EPS成長率平均 | 17.6% |
2年目から9年目のEPSを合計する
2年目から9年目のEPSを合計します。
ならし後EPS | |
2013 | 18.79 |
2014 | 20.57 |
2015 | 22.84 |
2016 | 27.85 |
2017 | 35 |
2018 | 43.7 |
2019 | 49.16 |
2020 | 58.61 |
合計 | 276.52 |
EPSの合計を2倍にし、初年度のならし後EPSで割る
8年間のならし後EPSの合計値を2倍にして、その値を初年度のならし後のEPSで割ると、適正PERが算出できます。
③想定EPSを計算する
ならしたEPSを平均成長率の分だけ増やしていき、EPSがどのように増えていくだろうか予測します。
想定EPS | |
2021 | 68.94 |
2022 | 81.08 |
2023 | 95.37 |
2024 | 112.18 |
2025 | 131.94 |
2026 | 155.19 |
2027 | 182.54 |
2028 | 214.71 |
2029 | 252.54 |
2030 | 297.04 |
④想定株価を計算する
想定EPSに適正PERを乗じて各年度の想定される株価を計算する
年度 | 想定 EPS | 想定 株価 |
2021 | 68.94 | 2359 |
2022 | 81.08 | 2775 |
2023 | 95.37 | 3264 |
2024 | 112.18 | 3839 |
2025 | 131.94 | 4516 |
2026 | 155.19 | 5311 |
2027 | 182.54 | 6247 |
2028 | 214.71 | 7348 |
2029 | 252.54 | 8643 |
2030 | 297.04 | 10165 |
⑤期待収益率を計算する
それではいよいよこれで期待収益率が計算できるのですが、年率の期待収益率はエクセルを利用すると最も楽に計算することができます。
「=(想定株価/現在株価)^(1/投資期間)-1」
という式を数式バーに挿入し、リターンキーを押します(ここでは表示の都合により記号に全角を使っているが、数字・記号ともに半角を使用してください。(半角では「=(想定株価/現在株価)^(1/投資期間)-1」)。
これで期待収益率を計算することができました。
いかがでしたでしょうか。一つ気を付けて頂きたいことは、期待収益率は投資期間によって変わってくることです。
10年間投資する場合と20年間投資する場合ではその年率の期待収益率が変わってくるのです(利益成長率の高い優良企業ほど長期間投資した場合の期待収益率が高くなります)。
期待収益率を投資における判断基準の一つに加えることで投資成績は格段にアップすることになると思いますので、ぜひ取り入れてみて下さい。