こう思ったことはありませんか?
「日本株よりも米国株の方が株価が上昇しているな」と。
それは勘違いではありませんし、米国がバブルで株価が上昇しているわけでもありません。
米国株上昇の理由は、米国経済・企業が最強だからです。
米国は経済が強いから軍事力が強い
これは多くの方が誤解しているのですが…
米国は軍事力や政治力が強いから発展してきたのではなく、経済が強いから軍事力を含む国家的パワーが強いんです。経済が強いからこそ防衛費に多額の予算をあてることができるのであって、決して逆ではありません。
そしてその経済を支えているのが最強の米国企業群。世界の企業で企業価値やブランド力でトップ100を決めると約半分が米国企業になります。その収益性や成長力も高くそれが米国株の上昇につながっているんです。
収益性が高い米国企業
我々日本人にとって日本とは世界有数の経済大国であり、米国とはその人口比程度の違いはあったとしても、それほどの違いは無いと思われている方も多いのではないでしょうか。
それゆえ企業の業績においても日本企業と米国企業とではそれほど違いが無いと思っていますが、それは大きな間違い。日本と米国とでは経済力に格段の差があります。
その差は日本企業と米国企業の収益力の差。企業の収益力についての指標はいくつかありますが、今回はROEという指標で比較してみましょう。
ROEとはどのようなものかというと、「株主の投資に対して一年でどれだけ利益をあげられるのかを表した割合」のことで、例えば企業を100億円で設立するとします。
ROEが30%であれば年間30億円の利益をあげることができ、10%であれば年間10億円の利益となる。ROEはどのような意味を持つかというと、「株主から預かった資本を企業がどれだけ効率よく運用できるか」ということです。
日本の企業の平均ROEは7%前後であり、米国の企業は14%前後。ちなみにヨーロッパの企業は11%前後です(その年により変動はある)。
つまり米国企業は日本企業の倍の収益力があるということであり、同じ事業規模の企業であったら米国企業は日本企業の2倍もの利益をたたき出しているんです。
この収益力の違いが投資結果においてそのまま差が現れてきます。投資とは投資先がいかに利益を生み出すかであるからです。投資先の企業が多くの利益を生み出してくれれば株主である投資家がその利益を手に入れることができるのです。
世界に進出し、新興国で売上を伸ばしている米国企業
コカ・コーラ、グーグル、マイクロソフト、アップル、IBM、マクドナルド、ディズニー……。誰もが知っている企業群ですが、これらの企業はすべて米国企業。
このように世界的に知名度(ブランド力)のある企業のほとんどは米国企業であり、その数は圧倒的です。事実、グローバルに知名度がある企業上位100社のうち、半分程度は米国企業なのです。
これが何を意味するのかというと、米国企業はそれだけ新しい市場、特に新興国を開拓してビジネスを展開していく力が強いということです。マーケティングを行い、流通網を整備し、広告などでブランド力を強化し、商品やサービスを売っていくのだが、なんといっても資金力の差が大きい。
自国市場が大きい米国企業は圧倒的な資金力を持っているからです。他国の企業の数倍もの資金力を備えた米国企業はその圧倒的な資金力で新興国に展開していく。他国の企業にとってみるとある程度の規模の企業であっても新興国の新市場を開拓することは容易なことではありません。圧倒的なパワーがなければ新興国の市場を開拓などできないのです。
自国の市場の縮小に焦る日本企業がなかなか海外展開をできないことからもその難しさが分るでしょう。米国企業のこういったブランド浸透力や展開力といったものもその強さの一つなのです。
そしてこれらの新しい市場を開拓する能力は企業業績に直結します。先進国市場においては売上の鈍化という現象は避けられないものであるので、成長著しい新興国においてシェアを獲得し、売上を伸ばすことは企業業績にとって大事なこと。企業が高い成長率を維持するためには欠かすことができません。
新しい産業や事業をリードするのも米国企業
インターネットが普及し様々なIT企業が誕生しましたが、そのような新しい分野での産業や事業をリードするのも米国企業です。
検索エンジンはグーグル、OSではマイクロソフト、通販ではアマゾン、SNSではフェイスブックやX(ツイッター)‥‥このようにその時代時代で新しい分野においても世界をリードするのは米国企業。
その他金融の分野でも新しい金融商品を生み出したり(サブプライムローンなどは世界経済に打撃をあたえたが)、情報やサービスの分野でも米国企業が世界でリードしています。そしてそれが世界標準となり、先行者として市場を独占して莫大な利益を得ているのです。
米国企業の収益力が高い3つの理由
①自国市場が大きい
先ほども述べましたが、企業にとって自国市場が大きいということは非常に大きなメリットとなります。
現在はグローバル化が進んではいますが、他国に進出する前には自国の市場を制する必要があり、自国の市場で稼いだ資金を使って他国に進出することになります。今後グローバル企業の戦いの場は新興国に移り、売上高を増大させるためには新興国でいかに稼ぐかにかかっているが、どの国の企業かによってこの資金量に雲泥の差ができてしまっていからです。
それでは日本市場と米国市場ではどれくらいの差があるのか。その市場規模は6倍程度の差があると考えられます。まず米国の人口は3億人を突破し、日本の3倍近くに迫っている。そして米国の生産性は日本の2倍程度ある(米国企業のROEは日本企業の2倍程度であり、米国人の収益性も日本人の2倍程度であると推察される)。よって単純計算で【3×2=6】となり、米国市場は日本の6倍であると思われる。
ちなみに国の税収は円安の進行もあって日米で10倍もの差になっている(2022年度の税収は日本が約71兆円、米国は約730兆円)。
そしてここからが問題。例えば日本市場で一定のシェアを獲得した企業と米国市場で一定のシェアを獲得した企業があるとします。両社は自国でリーダー企業となり、自国市場がある程度飽和したので新興国に進出しようとしていることとします。
この場合両社の利益率などは同じでも両社の利益には6倍もの開きがある。当然新興国へと投資をする資金量も6倍もの差がつくことになり、グローバル競争において勝負にすらならないことが多いのです。
②従業員の解雇が容易
社会全体で考えて従業員を解雇しやすいことが良いことか悪いことかの議論は置いておきますが、従業員の解雇が容易であることは企業にとって非常に大きなメリット。
米国では他国に比べて従業員の解雇がし易く、景気後退期や企業の経営が悪化した時は勿論、平常時でも必要のない従業員は整理しています。仕事を機械化、電子化することなどによってより少ない人員で効率化していくことが通常になっているのです。
「労働者を保護すると産業が停滞する」ということはどうやら事実。米国ではかつて強すぎる労働組合がGMやクライスラーといった自動車産業を破滅寸前まで追いつめてしまいました。
そして労働者の権利が強い国にでは若年層の失業率が跳ね上がってしまっていることにも注目。南ヨーロッパでは若年層の失業率が20%を超える国が続出し、日本でも若年層を結果的に非正規雇用へと追いやって社会問題化しています。
これら南ヨーロッパや日本の産業が停滞していることと、行き過ぎた労働者保護は産業を停滞させることは明らかです。このような行き過ぎた労働者保護の制約がない米国企業はそれだけ労働市場に柔軟性があり、経済活動においては他国の企業よりも非常に有利な立場にいることになります。
③日本と比べると法人税等の企業にかかる税金が安い
これについては日本が特殊な部類にはいるのですが、日本においては大企業の実効税率は約50%、それに対して米国や他の国々は20%~30%のところが多い。この税金の差ではどれほど業績に違いが出るのだろうか。
次の条件で比較をしてみましょう。
①企業Aの利益にかかる税金は50%、企業Bの利益にかかる税金は25%とする
②企業A、Bともに設備投資によって得られる利益は税引前で20%とする
③企業A、Bともに1000万円で企業を設立する(すべて設備投資資金にしたものとする)
④企業A、Bともに税引後利益はすべて設備投資資金にあてることとする
以上の条件だと両社の利益の推移はこのようになります。
税率50%の企業 | 税率25%の企業 | |||
税引前利益 | 税引後利益 | 税引前利益 | 税引後利益 | |
1年目 | 200 | 100 | 200 | 150 |
2年目 | 220 | 110 | 230 | 173 |
3年目 | 242 | 121 | 265 | 198 |
4年目 | 266 | 133 | 304 | 228 |
5年目 | 293 | 146 | 350 | 262 |
6年目 | 322 | 161 | 402 | 302 |
7年目 | 354 | 177 | 463 | 347 |
8年目 | 390 | 195 | 532 | 399 |
9年目 | 429 | 214 | 612 | 459 |
10年目 | 472 | 236 | 704 | 528 |
両社ともに初年度の税引前利益は200万円ですが(開業資金1000万円の20%)、税率の違いから税引後の利益に早くも大きな違いがでてしまっています。その後もその差は開いていく一方。10年目には2.2倍以上に差が開いてしまっています。
ここでもう一度言いますが、これらA社とB社は税率以外の条件は全く同じ企業。それにも関わらず税率によってこれだけ差がでてしまうのです。
投資をするなら米国株がオススメ
米国株上昇の理由は経済が強いから。米国企業が他国の企業よりも多くの利益を得ているからです。以上の理由から今後も米国株優勢の状況が続くと考えられます。となると投資をするなら米国株がオススメ。
私自身、日本株専門の時より米国株中心になったとたん投資成績が良くなりましたよ。