投資理論

割高なグロース株(成長株)に投資する危険性

成長初期段階の企業は売上が急速に上昇しているので魅力的に見え、ほとんど利益を生んでいないような割高な状態でもついつい投資をしたくなってしまいますよね。

しかし、それは非常に危険。

株価が一気に下落する可能性が往々にしてあるためです。

増収増益ながら株価が大幅に下落したズーム

ズーム ビデオ コミュニケーションズ(ZM)の株価は2019年の100ドルを下回る水準から一気に上昇し、2020年には600ドル近くまで上昇しましたが、2022年の頭には120ドルを割る水準まで株価は暴落しました。

この間ズームは増収増益、今後の業績見通しも増収増益ですが、株価は五分の一以下に大幅に下落しています。

なぜこのようなことになったのでしょうか。

それはコロナがある程度収束し、これまでのような急激な成長は今後できないことが予想され、成長鈍化懸念、つまり予想される利益増加率が下がってしまったためです。

なぜ増収増益でも成長鈍化するだけで株価が下がるのか

それではなぜ増収増益企業の株価が下がってしまうのでしょうか。

それは、成長鈍化によって適正PERが下がってしまうからです。それでは例をとって説明しましょう。

‣ここ数年の平均増益率は年30%
・昨年度のEPSは10ドル
・今年度の増益率は年10%
・今後の増益率の見通しも年10%

 昨年度(期待増益率は30%)今年度(期待増益率は10%)
EPS10ドル11ドル
適正PER約62倍約25倍
理論株価620ドル275ドル

この企業はこれまで年増益率30%と非常に高いので、適正PERは約62倍、理論株価は620(10×62)ドルです。

今年度は10%増益となり、EPSは11ドルとなりましたが、増益率の見通しが30%から10%に下がってしまったため、適正PERは約25倍、理論株価は275(11×25)と下がってしまいました。

このように企業の成長率が下がってしまうと適正PERが下がってしまうので、増益となっても理論株価が下がることは十分考えられるのです。

成長初期段階の企業に投資することは非常に危険

成長初期段階の企業に投資することは非常に危険であることが多いです。

なぜなら、

①株価が割高
②今後は成長鈍化する確率が非常に高い

からです。

危険な理由① 株価が割高

成長初期段階の急成長企業は投資家の目に留まりやすく、投資対象としては非常に「わかりやすい」と言えます。

売上や利益が急激に成長し、株価も上昇しているとそれがニュースや記事で取り上げられ、さらなる株価上昇となることが多いです。

しかし、ここで問題であるのが、投資対象として人気となるため、株価が割高になっていることが多いということ。

株価が割高であるため、今後の成長鈍化で株価が一気に下がる可能性があります。

危険な理由② 今後は成長鈍化する確率が非常に高い

成長初期段階の企業は今後成長鈍化する確率は非常に高いこと、これが一番の問題です。

その売上や利益の急成長は成長初期段階の一過性のものであり、今後はほぼ間違いなく成長は鈍化していきます。

それに伴い理論株価も一気に下がってしまうので、株価の上昇局面が終わると一転し、株価が下がる、それも大幅に下がってしまう確率が非常に高いのです。

このような企業への投資は上手く上昇局面に乗れればよいのですが、成長が鈍化すると割高な株価が一気に下がるので、投資対象としては非常に危険であると言わざるを得ません

安全な投資をするためには業績が安定し、割安な値段で投資することが最適解であると私は考えます。